佐藤愛子 著、『老い力』、文春文庫、2010年11月
購入時、帯には「いかに上手に枯れるか」と謳っていました。
著者の50代、60代、70代、80代と書き綴ってきた「老いと死」についてエッセイ集です。
なぜ30歳のわたしがこの本購入したかと言うと、
ひとつは、歳をとってからこの本を読んで「あぁ、こうすれば良かった!」
という事がないよう、将来の備え(心構え)になるかもしれないので読んでおこうという思いと、
ふたつは、今、若いうちに読んでおいて、
「なんだ、歳をとってもこんなもんなんだな。今の悩みのなんとも小さいことか…」
と、なるかもしれないと思ったから。
せっかくの、まだ若い30歳の今を将来への不安で時間を浪費するわたしの腐った思考回路に、大阪のおばちゃんに活を入れてもらっちゃおう!そんな気まぐれでこの本を手に取りました。
しかも、エッセイ集なので短編で、軽い読書にぴったりなのです。
著者、佐藤愛子先生について
1923年11月5日、大阪生まれ。なんと2021年現在、まだ97歳の元気なおばあちゃん!これは元気をもらうのに期待できそうです!
笑った:夫婦喧嘩のメリット
夫婦喧嘩の利点について語られており、序盤から笑わせていただきました。
刺さった著者の一言
今は欲望の充足が幸福だという思い決めが横溢(おういつ)している時代である
60代 孤独に耐えて立つ老人になりたい ー 私は「私の自然」に従って生きる
満たされた欲望と幸福は似て非なるものだと再認識した節でした。
ただ、時代は関係なく、歴史上いつでも人はそんな勘違いをしていると思います。
そこは少し、時と共に変化する社会にどこかついて行けてない著者のひがみと憂いを時代のせいにしている気がしました。
ちょっと共感しにくかった、著者の『女性らしさ』の説教!
50代の『化粧は生活のアクセント』の文中などで、戦前・戦後の女性の社会からの見られ方について語られているくだりがあります。なかなか戦後直後などと平成生まれのわたしには実感が湧きにくい場面でした。
人並に持ち合わせている想像力で理解はできましたが、共感とまではいたりませんでした。
まとめ
さて、読んでどうだったかと言うと、
一度読んだらもういいや、です。
最初はおばちゃんらしい、強気な姿勢が親しみを感じましたし、楽しい時もありましたが、
だいぶページ数を占める60代以降から、どんどん皮肉になっていき、
せきららに語る潔さはあるものの、人生の目標にしてみたいとは思えませんでした。
クセがあるようでも素朴で人間らしい人なんだなと言う印象ですが、
歳を重ねたうえでの人生の楽しみ方、人格の味を感じてみたかったです。
もう少し30代女子に夢をみさせてくださいな。
紙媒体のエッセイでも、読んでいて「これは一昔前のブログやSNSだな」と感じました。
何か確固たる伝えたいメッセージなど無いようで、その時々の思いを綴っています。
おまけ ~この本を読んでいたころの自分~
読んでいたその頃のわたしは、
うつ病で午前中のみ出社したり、または丸1日家に引きこもっていたり、
「おばあちゃんになっても独りぼっちで、金欠で不幸だったらどうしよう」
なんて、凡庸な悩みで時間を浪費して夜も眠れなかったりしていました。
もとは、自分は楽観的な(ガサツな)人間だと思っているのですが、周りにとっては真面目で繊細なんだそうです。
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